02 -BluE and SisteR-



「・・・・あ、」

ぺこり、と頭を下げる。私の目の前には、アリス様。エース様と親しい、余所者の方、らしい。

「こんにちは」

アリス様は、私に挨拶をしてくれる。役なしの、私に。どうして?理由が分からない。ただ、私の時計が、喜んでいるような気がするのは確かだ。
アリス様は城に滞在しているわけではない。だが、よく頻繁に女王陛下や、エース様に会いに此処へやってくる。今回も、その途中、なのだろう。

「こんにち、は」

頭を下げただけでは失礼かな、と思い、挨拶をしてみる。そんな、恐れ多くも、挨拶は大事だ、と思うのだ。

「あなた、お城のメイドさんだったのよね」

アリス様は、私に話しかけてくる。首を、縦に振る。この服をみれば、顔がなくとも、瞬時に城のメイドと分かるだろう。

「あなたのお仕事、手伝ってもいいかしら?」
「え?」

アリス様は、突拍子もないことを言ってきた。
何を、?

「エースに会いに来たんだけど、いないみたいだから」
「あの、」
「あ、大丈夫よ?仕事には慣れてるから」

アリス様はそう言う、けれどもこれは私の仕事だし、アリス様のような方に手伝っていただくわけにも・・・。アリス様は余所者で、私は役なしの、カード。

「っと、迷惑だったら別に構わないのよ?」

アリス様が慌てて言う。彼女を困らせたいわけじゃない。

「いえ!決してそんなことは・・・!」

まるで、手伝ってもいいと言っているようだ。
アリス様のような人にこんな雑用を押し付けるわけにも行かない。
けれども、彼女は仕事をしたいと行っている。こんな汚い仕事でも。

「では、お願い、致します・・・・」

折れた。

アリス様は優しい。こんな私も、こんな風に、優しく接してくれる。余所者、だから?私たちの本当の姿を知らないから?
どちらにしろ、今の時間が凄く大好きで、もう“時間なんて”止まってしまえばいいのに、

「・・あなた。大丈夫?」

ぼぅっとしてしまった。
アリス様の声で、目が覚める。自分しかいない世界へ旅立っていたようだ。空想の、世界。

「大丈夫です、ありがとうございます」

私はお礼を言う。お礼、というより謝罪をしている感じではあったが。と、私はアリス様が考え込んでいることに気づいた。何を、考えていらっしゃるのだろう。うーん、と唸っている。

「あの、」
「あ、はい、なんでしょう」
「・・・名前は、」

ない。
そんなにはっきりとはいえない、気がする。気を使わせてしまっているような、そんな感じがする。
私は黙って、目を伏せる。それから、顔を上げて、笑う。笑ったつもり。けれど、私に顔はないから。それすらも分からないかもしれない。
私に、顔はない。そう自覚している。分かりきった事実。

「・・、」

アリスさんは突然口を開いた。?何なのだろう。誰なのだろう。
私は声を返す。「はい?」

「あなたの、名前よ」

一瞬何を言っているのか、さっぱり分からなかった。・・?
誰なの、それは。誰?私?私なの?私の、名前?

「ないん、でしょう?」

名前。
アリス様は分かっていたようだ。私の態度で分かったようだった。その事実を。現実を。

「だから、私が名前をあげる」

見えることもない涙が、不意に目から溢れてくる。必死に、手で目元を押さえる。嬉しい、というよりも、感動というのか。
なんとも言いようのない感情を、心臓のない私を支配する。
私の時計は壊れてしまったの?不良品だったの?それでもいいかもしれない。こうして、涙できる。アリス様は私にむかって、言う。

「だからもう、作り笑顔なんてしなくていいから」

哀しく、哀しい顔をして。アリス様は言った。


BluE and SisteR
(Bule Girl and His Sister Girl)