04 -SisteR and BrotheR-



赤い赤い薔薇園の傍で干される、白いシーツ。風にぴらぴらと裾が揺れて、それに何度も光が反射する。

「エース、様」

そのシーツの向こう側。あの赤いコートは間違いなくエース様のものだ。また迷っているのだろうか。

「・・っ、兄さん!」

気づいたら体が動いていた。
エース様の、兄さんのコートの裾をいつの間にか掴んでいたのだ。ぎゅっと、握ったコートの先には、エース、・・・様。
そう思うとかぁ、と顔が熱くなる。恥ずかしい。

「・・・あれ、」

エース様は私――私の顔を見て、一言だけ。

「顔が前より・・・ハッキリ、してない?」

ぱちくりと驚いた顔をして私を見るエース様。視線が少しくすぐったくて、体全体が熱いみたいに感じた。

「え・・・と、」

そうだ。エース様の質問に答えなければ。
だけどどう答えたら良いのだろう。アリスさんに名前を貰ったからだろうか?そう正直に答えていいものなのか。どうしよう。

「あ・・・アリスさんに・・・、」
「アリスがどうかしたのか?」

アリス、に反応したエース様。
やっぱり、エース様にとってもアリスさんはすごく特別な存在なんだ。そう、実感する。名前を貰ったなんて言った後が・・・怖い。

「っ、」

いえない。いえない。
喉から出ようとする言葉を、体中が言うことを拒否している。
声が、出せない。恐怖、畏怖。

「どうしたんだ?」

エース様が聞いてくる。エース様と、私の身長の差からできる黒影が怖い。
言わなくちゃ。―――言えない。
でも、言わなくちゃ。今の状況は変わらない。何かしないと、いけない。兄さんが、はなれていっちゃう。

目尻に涙が溜まる。ああ、また泣きそうだ。

「にいさ・・・、」

ああ。もう、

後のことを考えるのはやめて、兄さんに抱きつく。それからぎゅっと、兄さんの服を握る。兄さんは、右手で刀の柄を握って構えていたたけれど、しばらくして私の髪を撫でた。
小さい頃のあの匂い。それと、血の匂い。

「・・・、」

ぼそりと呟く。兄さんが聞き取れなかったらそれはそれで良いんだ。聞こえているのなら聞いてくれればいい。ただの独り言なのだから。

「アリスさんに、名前頂いたんです」

涙が頬を滑り落ちて、兄さんの服に染みる。ぼろぼろと零れても兄さんの服にすぐ染みて、消える。髪を撫ぜる手が優しくなる。頭の天辺から毛先までをゆっくりと撫でられる。

「・・・、ねぇ」

兄さんが呟く。上からの突然の声に、ついビックリしてしまった。私が肩を震わせると兄さんは「ははっ」と無邪気に笑って、頭をぐしゃぐしゃと荒く撫でた。

「いい名前だな」

なんか結局、どうでも良くなったみたいで。


 SisteR and BrotheR
(Her Brother and His Sister)